お疲れ様です、Naoです。
みなさん、機械図面は読めますか?
「線がいっぱいで訳がわからない」「見るだけで拒絶反応が出る」
そんな人も多いのではないでしょうか。
正直に言います。保全マンは、設計者のように図面を「書く」必要はありません。
しかし、「読む」ことができないと、部品の発注も、鉄工所への加工依頼もできません。
今回は、教科書的な難しい理屈は抜きにして、「現場で使う記号」と、新人が一番つまずきやすい「公差(±、+、-)」の意味について、私の失敗談も交えて解説します。
1. これだけ覚えればOK!「第三角法」のイメージ
日本の機械図面は、ほぼ100%「第三角法(だいさんかくほう)」というルールで書かれています。
名前は学校や教科書では、よく「透明なサイコロ(箱)の中に物を入れて、その面を開いた図」として説明されます。 一般的にはこの説明が正しいのですが…正直、頭の中で箱を展開するのって難しくないですか? 私はこれで「どっちがどっちだっけ?」と混乱して挫折しかけました。
現場で読むだけなら、もっと単純に「スマホで撮った写真を、見たままの場所に並べる」と考えればOKです。
想像してください。目の前に「車」があります。
- 正面から写真を撮る → 真ん中に置く(これが正面図)。
- 右に移動して、横から撮る → 正面写真の「右」に置く(右側面図)。
- ハシゴに登って、真上から撮る → 正面写真の「上」に置く(平面図)。
つまり、「右から見た姿は右に、上から見た姿は上に描く」。 これが第三角法です。 難しい理屈は抜きにして、「見た位置と、描く位置が一緒」とだけ覚えておけば、現場で迷うことはありません。
2. 現場で頻出!これがないと仕事にならない記号5選
線や数字以外に、必ず書かれている「記号」。これを知らないと寸法が読み取れません。
① Φ(ファイ):直径
- 例:Φ 10
- 意味:「ここの直径は10mmだよ」
- 丸い棒や穴のサイズを示す、最もよく見る記号です。ノギスで測る場所ですね。
② M(エム):メートルネジ
- 例:M6、M8 ×1.25
- 意味:「ここはネジだよ」
- 数字はネジの外径(太さ)です。「Φ6の穴」と「M6のネジ穴」は全く別物なので注意!
③ R(アール):半径
- 例:R5
- 意味:「角を丸くしてね(半径5mmの円で)」
- 角が尖っていると危ない場所や、強度が欲しい場所につきます。
④ C(シー):面取り
- 例:C1
- 意味:「角を斜めに削ってね(45度で1mm)」
- 部品を入れる入り口や、怪我防止のために角を落とす処理です。
⑤ ±(プラスマイナス):許容差
- 例:100 ± 0.5
- 意味:「99.5mm 〜 100.5mmの間に入っていれば合格だよ」
- これが書かれている場所は、そこまで厳密な精度がいらない場所です。
- 逆に、これがなくて「+0.02」のような偏った数字が書いてある場所は、次の章で説明する「超重要ポイント」です。
3. 「プラス公差」と「マイナス公差」は何が違う?
さて、ここからが本題です。
図面の数字の横に小さく書かれた「+0.05」とか「-0.1」という数字。これを「はめあい公差」と呼びます。
現場で部品製作を依頼する時、こんな疑問を持ったことはありませんか?
「さっきの±(プラスマイナス)じゃダメなの? なぜわざわざプラスやマイナスにするの?」
実はこれ、「組み合わせる相手(穴と軸)」の関係で決まっているんです。
「穴」はプラス公差(少し大きく)が基本
ベアリングが入る穴や、ピンを通す穴。これらは基本的に「プラス公差(0〜+0.02mmなど)」で作られます。
理由はシンプルで、「穴が小さいと何も入らないから」です。
10mmのピンを通したいのに、穴が9.99mmだったら絶対に入りませんよね?だから、穴は「キッカリか、ほんの少し大きく」作るのがセオリーです。
「軸」はマイナス公差(少し小さく)が基本
逆に、穴に入れる棒(シャフト、ピン)はどうでしょう?
穴が「10.00mm」の時、棒も「10.00mm」だと、摩擦でなかなか入りません。
そこで、棒の方は「マイナス公差(-0.01〜-0.03mmなど)」で少しだけ細く作ります。
- ±(プラスマイナス): どっちに転んでもいい(そこまで重要じゃない)
- 穴(プラス公差): ちょっと広い
- 軸(マイナス公差): ちょっと細い
この関係(すきまばめ)があるからこそ、機械はスムーズに組み立てられるのです。
4. なぜ現場では「マイナス公差」の理解が重要なのか?
「プラスもマイナスもあるなら、図面通り作ればいいだけでしょ?」と思いますよね。
しかし、保全の現場で鉄工所に急ぎで部品製作を頼む時、特に意識すべきなのが「マイナス公差」です。
私が新人時代、これで失敗しました。
10mmの穴に入れるピンの製作を依頼する際、何も考えずに「10mmで(あるいは±0.1くらいで)」と頼んだ結果、出来上がったのは「10.05mm」のピン。
当然、穴に入りません。「入らないなら削ればいい」と言いますが、旋盤も何もない現場で0.05mmを均一に削るのは至難の業です。
「入らない」は現場の最悪の失敗
保全現場で部品を作るシチュエーションは、「今ある穴に、部品を入れたい」という場合がほとんどです。
- プラスにズレる(大きくなる): 絶対に入らない=ゴミになる
- マイナスにズレる(小さくなる): 少しガタつくが入る=とりあえず使える
だからこそ、軸やピンを作る時は「絶対にプラスにならないように、マイナス目で作ってください」と念を押す。
この「マイナス公差」の意味を肌感覚で理解しているかどうかが、現場対応力の差になります。
まとめ
図面は、設計者のラブレター…ではなく、「ここをこうしてくれ!」という指示書です。
- 第三角法は「見たまま配置」。
- 記号(Φ, M,± など)の意味を知る。
- 穴はプラス、軸はマイナスが基本。
- 加工依頼時は「入らなきゃ意味がない(マイナス公差)」を意識する。
特にマイナス公差の意味を理解していると、加工屋さんに「これ、どことハマる部品ですか?公差どうします?」と聞かれた時に、「穴に入れるからマイナスで!」と即答できるようになります。これが言えれば一人前です。
図面アレルギーを克服して、ワンランク上の保全マンを目指しましょう!
記号と公差の基本がわかったら、次はいよいよ「実践編」です。 「線が多すぎて訳がわからない…」と悩む人が多い『組立図(組図)』を、スラスラ読むためのコツを解説します。
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