お疲れ様です、Naoです。
[前回の記事(記号と公差)]では、図面の基礎についてお話ししました。 しかし、現場で実際に渡されるのは、装置全体が描かれた「組立図(組図)」であることが多いですよね。
正直、パッと見ると「線が重なり合って迷路みたい」で、見る気をなくしませんか? 私も新人の頃は、どこを見ればいいのか分からずフリーズしていました。
しかし、ベテランは「全部を一度に見ようとしていない」のです。 設計者がどういう意図で書いているかを知ると、見るべき順番が見えてきます。
今回は、画像がなくてもイメージできる、複雑な組立図を読み解くための「5つのステップ」を解説します。 明日、現場で図面を見る時にぜひ試してみてください。
ステップ1:まずは「親」となる図(正面図)を見つける
図面用紙の中に、図形はいくつも描かれていますが、必ず「メインとなる顔」があります。 多くの場合、用紙の中央、または左下にある一番大きな図が「正面図」です。
この図が、装置が立っている状態(あるいはメインの状態)を表しています。
- コツ: 細かい寸法や部品番号は無視して、「太い実線(外形線)」だけを目で追って、「なんとなくのシルエット」だけ把握してください。「あ、縦長の機械だな」くらいでOKです。
ステップ2:配置のルール(第三角法)を再確認
前回の記事(記号と公差)でも触れましたが、日本の機械図面は「第三角法」です。
- 正面図の上: 上から見た図(平面図)
- 正面図の右: 右横から見た図(側面図)
これらはバラバラの絵ではなく、「一つの物を別の角度から見たもの」です。
- コツ: 正面図と平面図の「縦のライン」、正面図と側面図の「横のライン」は繋がっています。 「正面で見えているこの部品の奥行きを知りたいな」と思ったら、そのまま目線を右(側面図)にスライドさせてみてください。そこで重なる部品が、知りたかった部品の側面です。
ステップ3:「一点鎖線(中心線)」を基準にする
図面をごちゃごちゃに見せている犯人は、無数にある線です。 しかし、一番大事なのは「一点鎖線(-・-・-)」です。
これは「中心」や「対称軸」、あるいは「動作の基準」を表します。 シリンダーやガイドレール、回転軸などは、必ずこの中心線に沿って配置されています。
- コツ: 部品の輪郭を追う前に、まず中心線を見つけてください。 そこがその部品の背骨です。背骨が見えれば、そこ肉付けされた部品の形が見えてきます。
ステップ4:標準部品(市販品)を見分ける【重要】
ここが一番のポイントです。 図面は「一から削り出す部品(製作部品)」と「買ってくる部品(購入品)」が混ざっています。 特徴的な形をしている購入品を脳内で検索して見つけると、一気に構造が見えてきます。
- エアシリンダー: 長方形や円筒から棒(ロッド)が飛び出している形。「動力源」です。
- リニアガイド: レールの上をブロックが滑る形。「移動の案内」です。
- センサ: 小さな四角や円柱で、配線が出ている形。
- コツ: これらを見つけると、「あ、シリンダーがあるからエアーで動くんだな」「ガイドがあるから、ここが上下に昇降するんだな」と、「装置の動き」が想像できるようになります。
ステップ5:断面図(A-A, B-Bなど)を活用する
もし今、お手元に機械図面があれば、その中のどこかに「A←」や「→A」のような矢印と文字が書かれていないか、探してみてください。(もし図面がなければ、次に現場で図面を見る時の宿題にしましょう!)
これは「そこで包丁を入れてスパッと切った断面図」が、図面の別の場所にありますよ、という合図です。 ごちゃごちゃして中身が見えない部分は、必ず別の場所に「A-A断面」としてスッキリ描かれています。
- コツ: 複雑な重なりは、無理にメインの図だけで理解しようとしないでください。 設計者も「これじゃ分からないだろうな」と思って断面図を用意してくれています。素直にそちらを見て構造を理解しましょう。
実践:私が図面を見る時の脳内手順
例えば、ある昇降装置の図面を見た時、私ならこう読みます。
- 何をする装置か想像する:
- 縦に長いレール(リニアガイド)の形が見える → 「何かを上下に昇降させる装置だな」
- シリンダーらしきものがある → 「空気の力で動くんだな」
- 動きを追う:
- 動く部分はどこか?(ガイドに乗っているプレートなど)
- 固定されている部分はどこか?(ベースとなるフレーム)
- 詳細を見る:
- 丸で囲まれた拡大図(詳細図)を見て、細かい位置決めやセンサーの当たり方を確認する。
まとめ
組立図は「迷路」ではなく、「プラモデルの設計図」と同じです。
いきなり全部を理解しようとせず、
- シルエットを見る
- 知っている部品(シリンダーなど)を探す
- 動きを想像する
この順番で見れば、必ず読めるようになります。 まずは現場の図面を広げて、「知ってる部品探し」から始めてみてください。
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