お疲れ様です、Naoです。
以前、ブログで「なめたネジのリカバリー」や「緩み止め対策」について紹介しましたが、今回は保全マンが最も体力を消耗する「錆びや焼き付きで、ビクともしない固着ネジ」との戦い方について解説します。
全身全霊で力を込めても回らない絶望感…。無理をすれば工具が壊れるか、腰をやられます。 力任せではなく、「ケミカル・熱・衝撃・トルク」を駆使して、スマートかつ大胆に攻略しましょう。
1. まずは「掃除」が全ての始まり
焦って潤滑剤を吹いてはいけません。 ネジの周りが錆びや油汚れでコテコテの状態では、せっかくの高性能ケミカルも奥まで浸透しません。
まずはワイヤーブラシやパーツクリーナーで、ネジ山と座面の汚れを徹底的に落としてください。これが最初の一歩です。
2. 【化学兵器】王道「ラスペネ」と、現場の裏番長「クリューバー」
掃除が終わったら、潤滑剤(浸透油)の出番です。 ホームセンターの安価なオイルスプレー(5-56等)も無いよりはマシですが、固着ネジには役不足なことが多いです。
王道にして最強「ワコーズ ラスペネ」
プロの整備士や保全マンの9割が持っていると言っても過言ではないのが「WAKO’S ラスペネ(RP-C)」です。 驚異的な浸透力で、目に見えない錆びの隙間に入り込みます。まずはこれを使っておけば間違いありません。
私の現場の秘密兵器「クリューバー(Klüber)」
ちなみに、私が働いている工場では「クリューバー(Klüber)」というメーカーの超高性能潤滑剤を使用しています。 一般にはあまり出回っていませんが、過酷な産業機械に使われる信頼性抜群のブランドです。もし現場にあったら、迷わず使ってください。
- ポイント: 吹いてすぐに回さないこと!潤滑剤が浸透するまで、数分(タバコ一本分くらい)待つのがプロの流儀です。
3. 【判断】酷いサビなら「初手バーナー」一択
ここで重要な分岐点です。 もし、ボルトが錆の塊のようになっていたり、明らかに「これは普通じゃ回らないな」と直感した場合は、小細工抜きで最初からガスバーナーを使います。
熱の力は偉大
ガスバーナーでナットや母材をガンガンに炙ります。 熱膨張で固着を剥がし、中の錆や接着剤を焼き切るためです。「結局、最後は炙ることになる」パターンが多いので、酷い時は最初から炙るのが最短ルートです。 (※周囲への引火や、熱影響には十分注意してください)
4. 【物理攻撃】ハンマーよりも「ショックドライバー」
潤滑剤と熱でもダメなら、次は「衝撃」を与えます。
ショックドライバー(インパクトドライバー)が最強
もし手元にあるなら、ハンマーで単に叩くよりも「ショックドライバー」を使用すべきです。 お尻をハンマーで叩くと、その衝撃力が強い「左回転(緩める方向)」の力に変換されます。「ガツン!」と一発で緩むあの感覚は、一度味わうと病みつきになります。
ない場合は「ハンマー」で叩いて目を覚ます
ショックドライバーが無い場所なら、ボルトの頭をハンマーで直接叩きます。 (※私はラチェット等に合うサイズのビットを付け、それを叩いて衝撃を伝えたりもします) 叩くことで固着部分にクラック(ひび)が入り、潤滑剤がさらに奥へ浸透します。
5. 【トルク攻撃】パイプ延長と「指先の感覚」
ケミカル、熱、衝撃で準備が整ったら、最後は「回す」工程です。 ガチガチのネジは通常の手工具では回らないため、メガネレンチなどに「鉄パイプ(単管パイプ)」を差し込み、持ち手を長くして回します。
「一気に回す」のがプロのコツ
パイプを使う時、ビビって中途半端に力を入れると一番危険です。 工具がしっかり掛かっていない状態でジワジワ力を入れると、工具が浮き上がり、一発でネジ頭を舐めてしまいます。
工具が奥までガッチリ嵌まっていることを確認したら、迷わず一気にトルクを掛けます。
「嫌な予感」がしたら即中止!
ここが一番大事です。 力を入れた瞬間、手に伝わる感覚で「あ、これ舐めるな(ヌルっといくな)」とか「かかりが悪いな」と思ったら、即座に力を抜いて中止してください。
この「違和感」を無視して強引に行くと、100%失敗します。 一度体勢を整え直すか、もう一度「叩き」や「炙り」に戻る勇気が、最悪の事態(ボルト折れ・完全なめ)を防ぎます。
まとめ
固着ネジ攻略は、状況判断が全てです。
- 掃除して、状態を見る。
- 酷そうなら最初からガスバーナーで炙る。
- ラスペネ(クリューバー)を浸透させて待つ。
- ショックドライバーで衝撃を与える。
- パイプ延長は、工具のかかりを確認して一気に回す(違和感があったら即やめる!)。
この手順と「指先の感覚」を研ぎ澄ませば、どんな頑固なネジも必ず外れます。 安全第一で、今日もご
安全に!
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今回の「固着ネジ」以外にも、現場でよくあるトラブルの対処法をまとめています。この3記事を読めば、ネジで困ることはなくなりますよ!
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