お疲れ様です、Naoです。
今回は、先日現場で遭遇した「回転体の治具(プーリー)が勝手にズレてくるトラブル」について、原因と解決策をメモしておきます。
一見ただの「ネジの緩み」に見える現象でも、裏には部品の寿命が隠れていることがある…という話です。
トラブルの現象
- 対象: モーターの軸に取り付いている回転治具(プーリーなど)
- 固定方法: キー材を入れて、イモネジ(セットスクリュー)で固定している
- 不具合内容: 設備を動かしていると、振動のせいか治具がだんだん上にズレて上がってきてしまう。
真の原因:「キー溝の摩耗」
最初はただの緩みだと思って増し締めしましたが、すぐに再発。 分解してよく見てみると、プーリー側のキー溝(キーがハマる溝)が摩耗して広がっていました。
長年の使用で隙間ができる → 回転時の負荷で「ガタ」が発生する → ガタによる衝撃でイモネジが緩む → 治具がズレる
いくらネジを締めても、土台となるキー溝がガタガタでは意味がなかったわけです。
⚠️注意:モーター軸側も要チェック
今回はプーリー側の摩耗でしたが、「モーター軸側のキー溝」が摩耗して痩せているケースもあります。 ここを見落としてプーリーだけ新品にしても、軸にガタがあればすぐに再発します。 (軸側がダメな場合は、モーター交換か軸補修が必要になり、かなりオオゴトになります…)
対処法:新品へ交換(しかし在庫がない時は…?)
今回は幸い、予備品置き場に新品の在庫があったため、部品ごと新品に交換して完了しました。 交換後はガタもなくなり、ズレる現象はピタリと止まりました。
もし「予備部品」がなかったらどうするか?
現場では「在庫がない!でもラインは動かさないといけない!」という場面がよくあります。 もし今回、新品がなかったら検討していた応急処置も記録しておきます。
- ネジロック剤(ロックタイト)の塗布
- 一番手軽な方法。イモネジに高強度のロックタイトを塗って、ガタによる緩みを無理やり抑え込む。
- ネジのサイズアップ
- 例えばM3のネジ穴をドリルでさらって、M4のタップを立て直す。
- ネジを太くすることで締め付け力を強くし、摩擦力を稼ぐ荒技。
- 【最終手段】肉盛り溶接
- 摩耗して広がってしまったキー溝や軸を溶接で肉盛りし、サンダーやヤスリで削って寸法を戻す。
- 手間はかかるが、部品が入荷するまで数ヶ月かかる場合などはやるしかない。
【最強の恒久対策】もし改造できるなら「メカロック」に変えてしまう
もし、この箇所が頻繁にガタついて困るようなら、思い切って「キー締結」をやめてしまうのが最強の対策です。
私がよく使う(使いたい)のは、アイセルなどの「メカロック(摩擦締結具)」です。
これは、テーパー状のリングを締め込むことで、軸と穴の隙間を強力に埋めて固定する部品です。他の工場やFA機器では当たり前に使われている部品です。
メリット:
- ガタ完全ゼロ: 面で固定するので、バックラッシ(隙間)がなくなります。
- キー溝不要: 軸や穴のキー溝が死んでいても関係ありません。
- 位相合わせが楽: 360度好きな角度で固定できます。
デメリット(注意点):
- スペースが必要: メカロック本体の厚みの分、プーリーの穴を大きく広げる加工(または買い替え)が必要になります。
ポン付けはできませんが、もし「何度もキー溝がダメになってライン停止する設備」があるなら、旋盤加工してでもこれに変える価値は十分にあります。
教訓
- 「ネジが緩んでいる」=「ただ締め直せばいい」とは限らない。
- 何度も緩む場合は、「キー溝の摩耗」によるガタつきを疑うべし。
- 相手側の軸も摩耗していないか必ずチェックする。
単純なことですが、急いでいると見落としがちなので自戒を込めて記録しておきます。


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