【設備保全】その叩き方、新品が死にます。ベアリング交換で寿命を縮める「タブー」と現場の裏技

設備保全

お疲れ様です、Naoです。

機械保全の仕事をしていると、週に1回は「なんか変な音がする」という呼び出しを受けます。 最近は振動センサーで常時監視するハイテクな工場もあるそうですが、私の現場では「耳と経験」が全ての頼りです(笑)。

今回は、機械保全の基本にして奥義である「ベアリング」について、教科書には載っていない「現場の交換テクニック」をメモしておきます。

1. 異音の正体を突き止める(ドライバー聴診)

「ゴォー」「ガリガリ」「キーン」 機械全体が唸っている時、どのベアリングが死んでいるか特定するのは難しいです。

そんな時、現場では「ドライバー聴診」をやります。

やり方:

  1. 長いマイナスドライバーの先端を、ベアリング付近のハウジングに当てる。
  2. グリップの端を、自分の耳の穴に押し当てる。
  3. 骨伝導で、内部の音がクリアに聞こえる。

これで数箇所聞き比べると、「あ、こいつだけ中がゴリゴリ言ってるな」と犯人が一発でわかります。

2. 交換部品の選定(基本の3種類)

型番(6204など)が合っていても、タイプを間違えると寿命が縮みます。 大きく分けてこの3つを覚えておけばOKです。

  1. 開放形(記号なし): フタがないタイプ。オイルに浸かっている場所(ミッション内など)用。
  2. 金属シールド形(ZZ): 金属のフタ。ゴミが少ない場所用。摩擦が少ない。
  3. ゴムシール形(DDU等): ゴムのフタ。防水・防塵性能が高い。

現場では、粉まみれの場所なのに「開放形」や「ZZ」を使ってしまい、粉が侵入して即ロック…というミスがよくあります。 汚い環境なら、迷わず「接触ゴムシール(DDU)」を選びましょう。

3. 外すときの裏技(プーラーの長さ不足・傷防止)

古いベアリングを抜くとき、「ギヤプーラー(ベアリング抜き)」を使いますが、こんなことありませんか?

  • 「プーラーのボルトが短くて届かない!」
  • 「軸のセンター穴を潰したくない!」

そんな時は、「要らないナットやボルト」を軸の先端に噛ませてみてください。 これをスペーサー(当て物)にすることで、長さを稼いだり、大事な軸センターを守りながら引き抜くことができます。地味ですが、これを知っていると焦りません。

4. 入れるときの鉄則(叩く場所の勘違い)

いざ新品を入れる時。 「ベアリングインストーラ」という専用工具があれば最高ですが、ない場合は「ソケットレンチのコマ」で代用します。

ここで一番大事なのが、「内輪と外輪、どっちを叩く(押す)か?」です。 実はここ、多くの人が勘違いしています。

鉄の掟:

  • 軸(シャフト)に入れる時「内輪(内側のリング)」を押す!
  • 穴(ハウジング)に入れる時「外輪(外側のリング)」を押す!

ルールはひとつ、「ボール(玉)に力を伝えないこと」です。 軸に入れる時に「外輪」を叩いてしまうと、衝撃が「外輪→ボール→内輪」と伝わり、入れる作業だけでボールやレース面が傷つきます。

「内輪を叩いちゃダメ」と思っている人もいますが、軸に入れる時は内輪を叩かないとダメです(もちろんシール面ではなく、金属のフチを狙ってください)。

これを守るだけで、交換後の寿命が劇的に伸びます。

まとめ

  • 最新の振動診断もいいけど、現場では「ドライバー聴診」が最強。
  • 環境に合わせて「ZZ」か「DDU」かを選ぶ。
  • 外すときは「捨てナット」を挟んで軸を守る。
  • 入れるときは「圧入される側のリング」だけを叩く(ボールを守る)。

ベアリング交換は「叩いて入れる」という野蛮な作業に見えて、実はめちゃくちゃ繊細な作業です。 次回交換するときは、ぜひこの小技を使ってみてください。

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