【新人の頃の失敗談】ポンプのサーマルが落ちる!テスターで電流を測ろうとして「一番やってはいけないこと」をした話

配電盤の端子にテスターの棒を当てて電流を測ろうとし、ショートして火花が散っている危険なイラスト。ポンプのサーマルリレーが落ちるトラブルと新人エンジニアの失敗談 設備保全

工場の保全担当として現場を走り回る日々。 先日、あるポンプのトラブル対応で、私は「測定器の数値を過信して、真の原因を見失う」という痛恨のミスを犯しました。

「テスターで測ったら電流は低かった。だからポンプは正常なはずだ」

そう思い込んでいた私が、なぜサーマルリレーやブレーカーを無駄に交換する羽目になったのか。 そこには、教科書にはあまり載っていない「現場測定の落とし穴」が2つ隠されていました。

同じ失敗をするエンジニアが少しでも減るように、恥を忍んでその全容を共有します。

1. トラブル発生:何度リセットしても落ちるポンプ

対象は、工場の設備用クーラントポンプ(三相200V / 0.4kW)。 「ポンプが止まってラインが停止している」との連絡を受け、急行しました。

盤を開けると、ポンプのサーマルリレーがトリップしています。 設定値を確認すると「2.1A」。 とりあえずリセットボタンを押して再稼働させますが、数分経つとまた「カシャ」っという音と共にトリップ。

「サーマルが落ちる=過負荷(オーバーロード)」が定石ですが、ポンプの音を聞く限り、そこまで苦しそうな音はしていません。 「もしかして、サーマル自体の誤作動か?」 そう疑い始めたのが、迷走の始まりでした。

2. やってしまった「禁断の測定方法」

「まずは現状の電流値を測ろう」 私は腰袋からデジタルテスター(マルチメーター)を取り出し、ダイヤルを「A(電流)」に合わせました。

そして、焦りもあったのでしょう。 ブレーカーの二次側端子(SとT)に、テスターのリード棒を直接当ててしまったのです。

液晶に表示された数値は「0.4A 〜 0.6A」

この数字を見た瞬間、私はこう判断しました。

「設定値は2.1A。実測値は3相合わせても1.5Aくらい。全然余裕じゃないか。 電流が低いのに落ちるということは、やっぱりサーマルかブレーカーが壊れているんだ!

すぐに在庫から新品のサーマルリレーを持ってきて交換。 「これで解決!」と意気揚々とスイッチを入れましたが……結果は無情にも再びトリップ。 ここでようやく「何かがおかしい」と気づき、先輩に相談して真相が判明しました。

3. 失敗の原因①:サーマルは「合計値」ではない

私の頭の中には、「三相の電流の合計が設定値を超えたら落ちる」という漠然としたイメージがありました。 だから、「0.4 + 0.5 + 0.6 = 1.5A だからセーフ」と計算してしまったのです。

しかし、これは大きな勘違いでした。

サーマルリレーの仕組み サーマルリレーは、R相・S相・T相の3本の中にそれぞれヒーター(バイメタル)が入っており、「各相を独立して」監視しています。

  • 誤: 3本の合計 > 2.1A でトリップ
  • 正: どれか1本でも > 2.1A でトリップ

つまり、合計値なんて計算する必要はなかったのです。1本ずつ見て、設定値を超えていないかを確認するのが正解でした。

4. 失敗の原因②:電流測定に「テスター棒」はNG

そして、もっと根本的で危険なミスが「測り方」です。

先輩に言われて背筋が凍りました。 「電流モードで端子に棒を当てるのは、自分でショートさせてるのと同じだぞ」

電圧(V)を測る時は、テスターは電気を通さない「壁」になります。 しかし、電流(A)を測る時は、テスターは電気を素通しする「ただの電線」になります。 それを、電圧のかかっているS-T間に当てるということは、200Vをショート(短絡)させていることと同義です。

なぜ爆発しなかったのか?

本来ならバチッ!と火花が散ってブレーカーが落ちるか、テスターが破損する場面です。 今回、たまたま無事だった(そして0.4Aという変な数字が出た)のは、以下の理由が考えられます。

  • テスター内のヒューズが既に切れていた。
  • 接触抵抗が高く、まともに電気が流れなかった。

つまり、私が信じていた「0.4A」という数値は、ポンプの電流でもなんでもない、ただのエラー数値(幻)だったのです。

5. 正しい調査手順と教訓

その後、正しい手順で再調査を行いました。

  1. 道具を変える: テスターではなく「クランプメーター」を用意。
  2. 1本ずつ挟む: R線、S線、T線をそれぞれ挟んで測定。
  3. 結果: ある相だけ、一瞬高い電流値(過負荷)を示していました。

原因はサーマルでも電気系統でもなく、「ポンプ本体のベアリング不良によるロック気味」でした。 最初から正しく測れていれば、部品を交換する手間も時間も不要だったのです。

今回の学びまとめ

トラブル対応で焦っている時ほど、基本動作が抜けてしまいます。自戒を込めて、以下のルールを徹底します。

  • 教訓1:電流を測る時は、絶対にテスター棒を使わない。「クランプメーター」一択。
  • 教訓2:サーマルの設定値は「1線あたりの上限値」。合計で判断しない。
  • 教訓3:現象(落ちる)と数値(低い)が矛盾したら、まずは「自分の測定」を疑う。

「数値が出たからヨシ」ではなく、「正しく測れているか?」を一呼吸おいて確認する。 高い勉強代になりましたが、現場のエンジニアとして大切な視点を得ることができました。

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