設備の稼働中に突然のチョコ停。原因を調べてみると、シリンダの動作を確認する2芯のリードスイッチ(シリンダセンサ)が反応していません。 テスターで電圧を測ってみると、なんと24Vの配線がケーブルのどこかで断線しており、電気が来ていないことが判明しました。
「予備線もないし、どこで断線しているか探す時間もない!でも、早く設備を復旧させなきゃ…!」
保全の現場にいると、こんな冷や汗をかくトラブルに遭遇することがありますよね。 今回は、そんな切羽詰まった状況で私が実際にやった「応急処置の裏ワザ」と、後になって気づいた「一歩間違えればPLCがONしない(最悪壊れる)NG配線の罠」について、電気回路の仕組みを交えて解説します。
1. ピンチを救った「近くの24Vのおすそ分け」
断線箇所が特定できない中、ふと周りを見ると、すぐ近くに別のシリンダ用のリードスイッチがあり、そこの端子台にはしっかり24Vが来ていました。
「この生きている24Vを分岐して、断線したリードスイッチに繋げば、とりあえず動くのでは?」
背に腹は代えられない状況。早速、近くの24Vを拝借して、断線したリードスイッチにジャンパー配線をしてみました。 すると……無事復旧! リードスイッチのランプはしっかり点灯し、PLC(シーケンサ)側でも入力が確認でき、設備は元通り動き出しました。現場の機転でなんとかピンチを切り抜けた瞬間です。
2. なぜ別の24Vで動いたのか?(そして、動かない時がある理由)
無事に設備が動いてホッとしたものの、後になってふと恐ろしい疑問が湧いてきました。
「もし、あの時借りた24Vが、元のリードスイッチが繋がっているPLCの入力ユニットとは*『別の電源ユニット』*から来ているものだったらどうなっていたんだろう?」
結論から言うと、リードスイッチ本体のランプはピカッと光っても、PLCのラダー回路(入力接点)は絶対にONしません。
なぜなら、電気の回路(ループ)が成立していないからです。 電気の基本ですが、電気は「出発した電源(プラス)」から出て、必ず「同じ電源のマイナス(0V)」に帰ってくることで初めて回路が成立し、電流が流れます。 PLCの入力ユニットには、電気の帰り道となる「COM(コモン)端子」があります。
もし、別の電源装置(パワーサプライ)から借りてきた24Vをセンサに入れ、それをPLCの入力端子に送ったとしても、入力ユニットのCOM端子が「元の電源の0V」に繋がったままだと、電気は迷子になって帰ることができません。
この仕組みを、現場でよくある「共通電源(OK)」と「異なる電源(NG)」のケースで対比させた図解がこちらです。

図1:PLC入力配線における「共通電源」と「異なる電源」の比較。電流のループが成立するかどうかがポイント。
図解のポイント解説
この図は、PLCの入力配線における「COM端子」と「電流ループ」の概念を、非常にわかりやすくまとめています。
- 図の左側:共通の電源を使う場合(OK) 現場で私が成功させた応急処置の仕組みです。1つの電源ユニット(電源A)からすべての電気が供給されています。正常なセンサAの24Vから、断線したセンサBへジャンパー線を引いています。電気は、電源Aの24Vから出て、センサB、PLC入力を通り、同じ電源Aの0V(COM)へと帰っています。これが「ループ成立」している状態であり、PLCは信号を受け取れます。
- 図の右側:異なる電源を使う場合(NG) もし違う電源ユニット(電源B)から24Vを借りてきた場合のシミュレーションです。センサCへはジャンパー線で電源Bの24Vが供給されています。電気はセンサC、PLC入力を通り、電源Aの0V(COM)へ向かいます。しかし、電源Aと電源Bの0Vは繋がっていないため、電気は電源Bへ帰ることができません。これが「ループ不成立」であり、センサはONしてもPLCのラダー接点はOFFのままです。
このように、「電気がどこから来て、どこへ帰るか」という回路全体のループが成立していることが、応急処置を成功させるための必須条件なのです。今回の私の応急処置が成功したのは、「たまたま借りた24Vが、元の回路と同じ電源(COMが共通)だったから」という運の要素が大きかったわけです。
3. 現場の罠:「適当に空いてる0V使っていいよ」という先輩の言葉
ここで、新人の頃に先輩から言われたこんなアドバイスを思い出す人もいるかもしれません。
「リードスイッチとか追加配線する時、適当に空いてる0Vや24Vの端子から電源取っていいよ」
実はこれ、半分正解で半分危険なんです。
多くの中小規模の設備では、制御盤の中にある直流電源(パワーサプライ)は1つだけです。そこから端子台を使って各所にタコ足配線のように分配しているため、「盤内のどこにある端子でも、線をたどれば最終的に同じパワーサプライに行き着く」ように作られています。先輩の言葉は、この「どうせ根元は一緒だから」という前提に基づいています。
しかし、これを鵜呑みにするのは危険です。 現場の9割はこれで動きますが、残りの1割で痛い目を見ます。以下のようなケースでは、適当な電源を拾うと深刻なトラブルになります。
- 動力と制御で電源ユニットが分かれている設備: ノイズ対策などで「センサ用の電源」と「モーターやバルブ用の電源」を分けている場合、回路が独立しているためPLCはONしません。
- 安全回路(セーフティ)が絡む場所: 安全ドアや非常停止などは、通常の電源とは完全に切り離された専用ラインを使っています。ここに普通の電源を混ぜると、安全装置が働かなくなる重大な事故に繋がります。
4. 失敗しない!応急処置前の「テスター確認手順」
現場でのトラブル対応は時間との戦いですが、適当な配線は二次災害を生みます。もし私と同じように「近くの電源を借りたい」と思った時は、配線する前に必ずテスターで以下の確認を行ってください。
同じ電源(共通COM)か確認する方法
- テスターを「直流電圧(DC V)」を測るモードにする。
- テスターの赤色リード(+)を、「借りようとしている24V端子」に当てる。
- テスターの黒色リード(-)を、「PLC入力ユニットのCOM端子(またはそのCOMに確実に繋がっている0V端子)」に当てる。
- 結果の判定:
- 「24V」前後がしっかり表示されれば、同じ電源系統のループが完成している証拠です。応急処置に使ってもPLCはONします。
- 「0V」や「数Vの不安定な数値」が出た場合、電源が独立しています。絶対に繋いではいけません。
5. まとめ
今回は、断線したリードスイッチを「近くの24V」で応急処置した実体験と、その裏に潜む電気回路の仕組みについて解説しました。
- 違う電源から24Vを持ってきても、COMが繋がっていなければPLCはONしない。
- 先輩の「適当でいいよ」は、電源が1つしかない設備限定のローカルルール。
- 他から電源を借りる時は、必ずテスターで電位差(24V出るか)を測る。
そして何より大切なのは、これはあくまで「その場をしのぐための応急処置」だということです。 後日、時間ができたタイミングで必ず断線箇所を特定し、正規のルートでケーブルを引き直すことを忘れないでくださいね。
「電気がどこから来て、どこへ帰るのか」をしっかり意識することが、トラブルを確実に直すプロへの第一歩です!


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