お疲れ様です、Naoです。
昨日は「なめたネジを外す」というトラブル対応の話をしましたが、保全マンにとってさらに重要なのは「そもそも緩ませないこと」です。
機械トラブルの多くは、たった1本のネジの緩みから始まります。 今回は、現場で実践している「緩み止め対策」と、接着剤の正しい選び方について紹介します。
1. なぜ、あんなに固く締めたのに緩むのか?
「親の敵」のように締め付けたボルトでも、なぜか緩んでしまうことがあります。主な原因は以下の3つです。
- 振動・衝撃: 設備の振動で、少しずつ回ってしまう(これが一番多い)。
- 温度変化(ヒートサイクル): 熱で膨張し、冷えて収縮する繰り返しで、接合面に隙間ができる。
- 初期なじみ: 新品の時や分解直後は、接合面の凹凸が馴染んで微小な隙間ができ、軸力(締め付ける力)が低下する。
だからこそ、定期的な「増し締め」や、最初からの「緩み止め対策」が不可欠なんです。
2. 【視覚的対策】合いマーク(Iマーク)は「白」一択
基本中の基本ですが、ボルトを締めたら必ず「合いマーク(Iマーク)」を書きます。ボルトと母材にまたがって線を引くあれです。下の画像が合いマークです。

- 目的: 緩んで線がズレていれば一目でわかる。触らなくても点検できる。
- おすすめのペン: 私は「油性の白」を愛用しています。
- 黒っぽい鋳物の肌でも、塗装されたカバーでも、白なら背景色に影響されずにハッキリ見えるからです。メーカーにはこだわっていませんが、視認性重視なら白が一番です。
3. 【化学的対策】ロックタイト(ネジロック剤)の極意
振動が激しい場所には、嫌気性接着剤であるロックタイト(Loctite)を使います。
必ず「図面」を確認しよう
「とりあえず塗っておけばいい」は危険です。 機械の組立図や部品図の注記に「ロックタイト〇〇塗布のこと」と指定がある場合は、必ずその番号(強度)を守ってください。指定がない場合でも、場所に合わせて正しい強度を選ぶ必要があります。
覚えておきたい有名な3種類
ヘンケル社のロックタイトには多くの種類がありますが、保全でよく使う代表的な3つを紹介します。色は強度を見分ける目安になります。
- 【中強度】243(青):
- 特徴: 最もスタンダード。ハンドツール(スパナ等)で取り外し可能です。
- 用途: 定期メンテナンスで外す可能性がある場所は、基本これを選びます。
- 【高強度】263(赤):
- 特徴: 永久固定用。ガチガチに固まるため、外すにはガスバーナー等で約250℃以上に加熱する必要があります。
- 用途: スタッドボルトや、二度と緩んでほしくない重重要保安箇所。
- 【低強度】222(紫):
- 特徴: 弱い力で外せます。
- 用途: アルミや真鍮など、相手が柔らかい金属の場合や、M6以下の小さなネジに使用します。
※他にも「後浸透用(緑)」など様々な種類があります。カタログや図面を見て最適なものを選びましょう。
【重要】塗る前の「脱脂」サボってませんか?
ロックタイトの効果を出すには、下準備が命です。 ネジ山やネジ穴に油が残っていると、接着力が激減します。
私は必ずパーツクリーナーを吹きかけ、ウエスで拭き取って完全に脱脂してから塗布しています。このひと手間を惜しむと、塗る意味がありません。
便利な「スティックタイプ」
最近のお気に入りは、液垂れしないスティックタイプ(リップクリームのような形状)です。 液体タイプだとどうしても手が汚れたり、出しすぎたりしますが、スティックなら狙ったところに塗れて、工具箱の中で漏れる心配もありません。これは本当に便利です。
4. 【構造的対策】進化する「緩まないネジ」
物理的な対策としては、ダブルナットや座金が一般的ですが、最近は構造的に「絶対に緩まないネジ」も登場しています。
- ハードロックナット等: 2つの異なるナットを組み合わせ、クサビの原理で強力にロックする製品。新幹線や鉄塔など、過酷な環境で使われています。
重要な箇所には、こうした高機能なボルト・ナットへの交換を提案するのも、保全マンの腕の見せ所ですね。
まとめ
- 緩みは振動や温度変化で必ず起きる。
- 合いマークは、どこでも目立つ「白」で書く。
- ロックタイトは図面の指示に従い、「青(中強度)」「赤(高強度)」などを正しく使い分ける。
- 塗る前の脱脂は必須。手が汚れないスティックタイプが快適。
- 最新の緩まないネジも活用検討を。
「緩み」を制するものは保全を制します。 しっかり対策して、突発停止のない平和な現場を作りましょう!
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緩み止め対策は重要ですが、逆に「ロック剤が効きすぎて外れない!」というトラブルも起きがちです。
そんな時のために、プロの外し方もチェックしておいてください。
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