工場の「プシュー」は何してる? ガス置換の仕組みとトラブル修理事例

工場の配管設備の前で、デジタル圧力計(0.58MPa)とアナログ圧力スイッチ(0.7MPa)の数値のズレを指差して解説する保全作業員のイラスト。「プシュー」とガス置換(パージ)を行っている様子。 設備保全

工場の設備が動いている時、「プシュー、プシュー」と空気が抜ける音をよく聞きませんか? あれはただ空気を捨てているわけではなく、「置換(パージ)」という超重要な工程を行っていることが多いんです。

今日は、この「置換」の基礎知識と、私の現場(高機能な真空置換設備)で実際に起きた「設定ミスのトラブル事例」を紹介します。


1. そもそも「置換(パージ)」とは?

工場では当たり前のように使われる「置換(ちかん)」という言葉。 英語では「パージ(Purge)」と呼ばれ、「追放する」「清める」といった意味があります。

設備のメンテナンスや運転において、配管やタンクの中にある「不要なガス(主に空気)」を、「目的のガス(主に窒素)」に入れ替える作業のことを指します。

なぜわざわざ入れ替えるの?

ただの空気ならそのままでも良さそうですが、工場によっては空気が「邪魔者」になります。理由は大きく2つ。

  1. 爆発を防ぐ(安全のため)
    • 可燃性のガスや溶剤を扱うラインに「酸素」が残っていると、火がついた時に大爆発します。そこで、燃えないガス(窒素など)に入れ替えて酸素を追い出し、安全な状態にします。
  2. 品質を守る(劣化防止)
    • 空気中の「酸素」や「水分」は、薬品を酸化させたり、製品を湿気らせたりする大敵です。これらを追い出すことで、製品の品質を保ちます。

要するに、「配管の中を、何にも反応しないクリーンなガスで満たしたい!」 そのために行うのが、置換(パージ)というわけです。


2. ガス置換の「3つの流派」

一口に「ガスに入れ替える」と言っても、目的やコストによってやり方が全然違います。

① 流通置換法(スイープパージ)

~とにかく流して押し出す!~ 一番シンプルで、設備も安く済む方法です。

  • やり方: 入口からガスを流し込み続け、出口を開けっ放しにして、中の空気をところてんのように押し出します。
  • イメージ: コップに水道の蛇口から水をジャージャー注ぎ続けて、溢れさせて入れ替える感じ。
  • メリット: 制御が簡単(バルブを開けるだけ)。
  • デメリット: ガスの消費量が多い(垂れ流し)。配管の隅っこ(デッドスペース)に空気が残りやすい。

② 加圧置換法(プレッシャーパージ)

~薄めて捨てる「希釈」作戦~ 真空ポンプはないけれど、しっかり空気を抜きたい時に使われます。

  • やり方: ガスを入れて加圧(混ぜる)→ 排気(捨てる)→ これを数回繰り返す。
  • イメージ: 濃いカルピスに水を足して、混ぜて、半分捨てて……を繰り返して薄めていく感じ。
  • メリット: 真空ポンプが不要。圧力をかけるので隅々までガスが行き渡る。
  • デメリット: 回数を繰り返さないと純度が上がらない。時間がかかる。

③ 真空置換法(バキュームパージ)

~最強の洗浄力! 一度吸ってから入れる~ 最も確実で、品質管理が厳しい現場で使われます。私の現場もこの方式です。

  • やり方:
    1. 真空引き: ポンプで配管内の空気を「ギューッ」と吸い出す。
    2. 加圧: N2ガスを一気に入れて、圧力を上げる。
    3. 排気: これを必要回数繰り返す。
  • イメージ: コップの中身をストローで「ズゾゾッ」と全部吸い取ってから、新しい水を注ぐようなもの。
  • メリット: 物理的に空気を吸い出すので、不純物が劇的に減る。
  • デメリット: 設備が大掛かり(真空ポンプが必要)。

3. 【実録】真空置換装置で起きた「謎の圧力異常」

さて、ここからが本題(保全マンの腕の見せ所)です。 私の担当する設備は、3つ目の「真空置換」を行っています。一度真空まで引いてからN2で加圧(約0.6MPa)するので、空気の残留はほぼゼロに近いはずです。

しかし先日、この優秀な設備で「N2圧力異常」が発生しました。

症状:加圧完了のはずがエラー?

この設備は、真空引きした後に「0.58MPa」まで窒素を入れて加圧します。 デジタル圧力計の表示は、しっかり「0.58MPa」に達している。それなのに、機械は「圧力が足りない(異常)」と言って止まるのです。

原因:アナログスイッチの「高望み」

原因は、デジタル計とは別にバックアップで付いていた「アナログ圧力スイッチ」の設定ミスでした。 このスイッチは、設定圧を超えるとOFF(正常)になり、「圧力OKだよ!」と信号を送るタイプ(b接点)でした。

しかし、その設定目盛りを見てびっくり。

  • 設備の加圧目標: 0.58 MPa
  • スイッチの設定値: 0.70 MPa

おわかりでしょうか? 設備側は「0.58まで入れたから完璧!」と思っていても、監視役のスイッチは「いや、0.7に届いてないからダメ(圧力不足)だ!」と判定していたのです。

対策

スイッチの設定値を、実際の運転圧力より低い「0.5MPa」付近まで下げました。 これで、加圧完了時にスイッチが確実に反応(OFF)するようになり、無事にエラーは解消しました。


まとめ

今回の教訓です。

  1. 置換方式を知る: 自分の設備が「流しているのか」「薄めているのか」「吸っているのか」を知れば、トラブルの原因が推測しやすくなる。
  2. アナログとデジタルのズレに注意: メイン制御(デジタル)の目標値と、監視用(アナログ)の設定値に矛盾がないか確認する。
  3. 「監視役」が厳しすぎると現場が止まる: 安全マージンは大切ですが、物理的に到達できない数値を設定してはいけませんね(笑)。

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