ヒーター故障の対処法を全解説!温度が「上がらない」「暴走する」時の原因と診断フロー

「ヒーター故障の対処法を全解説!温度が上がらない・暴走する原因と診断フロー」というタイトル文字と、冷えたヒーター・過熱したヒーターの対比画像。 設備保全

冒頭文

「成形機の温度がいつまで経っても上がらない」 「逆に、設定温度を超えてどんどん上昇し続ける」

温度制御のトラブルは、品質不良に直結するだけでなく、火災のリスクもある非常に危険な故障です。 この記事では、現象別に「まず疑うべき箇所」と「プロの診断手順」をチャート形式で解説します。


【現場用】最短診断フローチャート

トラブルの症状に合わせて、以下の項目を順にチェックしてください。

症状A:温度が上がらない(または遅い)

  1. アンペアチェック(電流測定)
    • 0Aまたは低い: ヒーター断線、またはヒューズ切れ。
    • 正常値: ヒーターはシロ。熱電対の抜けや、取付位置ズレを疑う。
  2. 制御出力チェック(OUTランプ)
    • ランプ点灯+電流なし: SSR(ソリッドステートリレー)かマグネットの故障。
    • ランプ消灯: 温調器の設定ミス、または温調器自体の故障。

症状B:温度が下がらない・上がり続ける(暴走)

【危険】すぐに主電源を切ってください

  1. SSR・マグネットの確認
    • 温調器のOUTランプが消えているのに、ヒーターに電気が流れている → SSRのショート破壊(溶着)が濃厚。
  2. 熱電対の確認
    • 熱電対がヒーターから外れて浮いていると、温度を検知できずに「まだ寒い」と勘違いして加熱し続けます。

↓ 以下、詳しい解説と原因別の対策

1. 温度が上がらない原因:まずは「ヒーター」か「制御」か

真っ先に疑うのは「ヒーターの断線」ですが、それ以外にも原因はあります。

① ヒーターの断線・劣化

最も多い原因です。クランプメーターで電流値を測ってください。

  • 電流が流れていない(0A)なら断線。
  • 電流が低いなら劣化です。

詳しいチェック方法はこちら ヒーターの確実な診断方法(クランプ・メガーの使い方)は、別記事で詳しく解説しています。【現場直伝】ヒーター断線・漏電の点検手順]

② ヒューズ切れ

意外と見落としがちなのがヒューズです。

  • 症状: 制御盤内のヒーター回路用ヒューズが飛んでいる。
  • 対策: 交換前に必ず「漏電チェック」をしてください。ショートや漏電が原因でヒューズが切れた場合、そのまま交換すると再度爆発して危険です。

③ リレー(SSR・マグネット)の「開路」故障

温調器は「ONになれ!」と指令を出しているのに、スイッチ役のリレーが動いていないパターンです。

  • 症状: 温調器の画面には「OUT(出力)」が出ているのに、電流が0A。
  • 原因: SSRの入力不良や、マグネットコイルの断線。

2. 温度が上がり続ける原因:一番怖い「暴走」トラブル

設定温度を無視して温度が上昇し続ける場合、ヒーターそのものは正常です。「電気を止める役割のもの」が壊れています。

① SSRのショート破壊(パンク)

現場で最も多いのがこれです。半導体リレー(SSR)は、壊れると「ONになりっぱなし(通電状態)」で固まる特性があります。

  • 症状: 温調器の電源を切っても(制御をOFFにしても)、ヒーターが加熱され続ける。
  • 対策: SSRの交換しかありません。放熱不足が原因のことが多いので、盤用ファンが回っているかも確認しましょう。

② 熱電対(センサー)の抜け・浮き

制御系は正常でも、温度を測る「目」がおかしいパターンです。

  • 現象: ヒーターはカンカンに熱いのに、温調器の現在温度表示が低いまま(室温など)。
  • 原因: 熱電対が測定穴から抜けてしまい、外気の温度を測っている。
  • 結果: 機械は「まだ設定温度に達していない」と判断し、フルパワーで加熱し続けてしまいます。

3. 表示温度がおかしい・ズレる場合

「温度は上がっているようだが、表示が信用できない」「5℃くらいズレている気がする」 この場合、原因が「センサー(熱電対)」にあるのか、「温調器本体」にあるのかを切り分ける必要があります。

① 熱電対の「断線しかけ」

完全に断線しておらず、内部で切れかかっている(接触不良の)状態です。

  • 症状: 温度表示が安定せず、時々「極端に高い値」が表示される。
    • ※接触不良によるノイズや、温調器のバーンアウト機能(断線検知)が反応しかけて、表示が振り切れることがあります。
  • 対策: 配線を揺らしてみて数値が飛ぶようなら、熱電対の寿命です。交換しましょう。

② 温調器の「校正確認」(本体の健全性チェック)

「表示が常に5℃くらい低い」といった場合、温調器本体が正しい値を表示できているか確認(校正)します。

  • 方法:
    • 現場に標準信号発生器(キャリブレータ)があれば、熱電対の代わりに接続し、特定の温度(例:200℃相当の電気信号)を入力してみます。
  • 判定:
    • 表示が「200℃」になる → 温調器は正常です。(原因は熱電対の劣化など)
    • 表示がズレる(例:195℃) → 温調器本体の故障(経年劣化)です。本体交換か、メーカー修理が必要です。

③ 【プロの技】新品センサーでの「仮配線」テスト

キャリブレータがない場合や、より実戦的に確かめる場合は、これが最強の方法です。

  1. 仮付け: 今ついている熱電対はそのままで、温調器の端子台に「テスト用の新品熱電対」を接続します。
  2. 測定: テスト用熱電対の先端を、元の熱電対と「全く同じ位置・同じ高さ」に固定して温度を測ります。
    • 重要: 測る場所が1cmでもズレると温度が変わってしまうため、診断になりません。必ず測定条件を揃えてください。
  3. 比較:
    • これで温度が正常に表示されるなら、元々ついていた熱電対がクロ(故障)です。

まとめ:トラブル時は「上流」か「下流」かを見極める

ヒーター温度トラブルの診断は、電気の流れをイメージすると簡単です。

  1. 下流(ヒーター本体): 断線していないか? → [記事Aへ誘導]
  2. 中流(リレー・ヒューズ): スイッチは正常に動いているか?暴走していないか?
  3. 上流(センサー・温調器): 正しい温度を検知できているか?校正はずれていないか?

この3段構えでチェックすれば、どんな温度トラブルも迷わず原因を特定できます。 「温度異常」の呼び出しが来たら、まずは焦らずクランプメーターを持って現場へ向かいましょう!

【コラム】私の失敗談:「水はすぐ溜まるだろう」という油断

まだ新人の頃、水用ヒーター(投込みヒーター)を交換した時のことです。 水槽に水は入っていましたが、まだヒーターが完全に浸かる水位には達していませんでした。

私は「どうせ自動給水で溜まっていくし、先に電源を入れておいても大丈夫だろう」と安易に判断し、その場を離れてしまいました。

しかし、運悪く「フロートスイッチ(水位センサー)」が故障しており、途中で給水が止まってしまっていたのです。 しばらくして戻ってくると、露出していたヒーター部分は空焚き状態になり、断線して壊れていました。

教訓: 「だろう運転」は事故の元です。センサーなどの自動制御を過信せず、「自分の目でヒーターが水没したことを確認してから」スイッチを入れる。これが鉄則です。

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