Vベルトが外れない人へ。「テンションを緩めてもダメ」な時の現場の知恵

設備保全

お疲れ様です、Naoです。

工場の機械から「キュルキュル!」「ゴーォォォ!」という爆音が響いていませんか? それは十中八九、動力を伝える「Vベルト」の悲鳴か、それに伴う不具合です。

今回は、現場で頻繁に行う「Vベルトの交換方法」について解説します。 教科書通りの手順だけでなく、現場のプロが実践している「工具を使わずに5秒で外すテクニック」と、それでも外れない時の「最終手段」をお伝えします。

1. その音、本当にベルトですか?(切り分け診断)

交換する前に、必ず確認すべきことがあります。 「音がするからベルト交換だ!」と決めつけるのは早計です。

  • キュルキュル音: ベルトの滑り、劣化、緩みの可能性大。
  • ゴーォォォ音: ベルトだけでなく、モーターやファンの「ベアリング」が死んでいる可能性もあります。

確実な診断方法

一番確実なのは、「一旦ベルトを外して、モーターだけ回してみる」ことです。 ベルトを外した状態で回して静かなら、原因はベルト(または負荷側の機械)。 それでも音がするなら、モーターのベアリング異常です。

まずはこの「切り分け」を行ってください。

2. 【スマート技】工具不要!「裏返して回す」テクニック

通常、Vベルトを外す時はモーターベース(テンションボルト)を緩めてダルダルにします。 しかし、緩めてもプーリーの溝に引っかかって、なかなか外れないことが多いですよね。

そんな時、無理やり引っ張るのではなく、「ベルトの特性」を利用した賢い外し方があります。 まずは、こちらの動画をご覧ください。非常に分かりやすく解説されています。

手順解説:なぜ「裏返す」のか?

Vベルトは「Vの字」の形をしているため、溝にガッチリハマって抜けません。 しかし、「裏返し(背中合わせ)」にすることで、摩擦と引っかかりを無効化できるのです。

  1. ひねる: ベルトを手で掴み、雑巾絞りのようにグイッとひねって裏返します。
  2. 乗せる: ベルトの「平らな背中の面」をプーリーの縁(フチ)に乗せます。
  3. 回す: そのままプーリーを回すと、抵抗なく「スル〜ッ」と手前に外れてきます。

この方法なら、プーリーを傷つける心配もなく、指一本分の力で外せます。まずはこれを試してください。

3. 【力技】それでもダメなら「マイナスドライバー」

現場によっては、錆びつきが酷かったり、スペースが狭すぎて裏返す余裕すらない場合があります。 「スマートな技じゃビクともしねぇ!」 そんな時に使う、現場の最終手段が「マイナスドライバー」です。

手順(現場の基本テク)

  1. 差し込む: プーリーとベルトの間に、大きめのマイナスドライバーをグイッと差し込みます。
  2. てこの原理: ドライバーを倒して、ベルトをプーリーの溝から外側へ浮かせます。
  3. 回す: ベルトを浮かせたまま、手でプーリーを「グリッ」と回します。
  4. 外れる: 自転車のチェーンを外すような感覚で、ボロンと強制的に外れます。

【注意!】 これはプーリーを傷つけるリスクがある方法です。ドライバーとプーリーの間にウエス(布)を挟むなどして、傷防止に努めてください。 また、指を挟まないように細心の注意を払ってください。

4. ベルトの選定(三ツ星ベルトがおすすめ)

外したベルトには、必ず型番が書いてあります(例:A-40、B-52など)。 文字が消えて読めない場合は、ベルトの外周の長さをメジャーで測って換算表で調べるか、ベルト屋さんに見てもらいましょう。

ちなみに、私は「三ツ星ベルト」製品を愛用しています。 耐久性、入手のしやすさ、品質の安定感。現場で長年使われている理由がわかります。迷ったら三ツ星を選んでおけば間違いありません。

5. 取り付けと「張り(テンション)」の調整

新品のベルトを入れる時も、先ほどと同じようにプーリーに掛けてから回して入れ込みます(指詰め注意!)。

入った後に一番重要なのが、「張り(テンション)」の調整です。

  • 張りすぎ: 軸受(ベアリング)に負荷がかかりすぎて、すぐ壊れます。
  • 緩すぎ: ベルトが滑って発熱し、早期断裂の原因になります。

調整は「指の感覚」で決める

教科書的には「テンションゲージ」という測定器を使いますが、現場でいちいち出している暇はありません。 熟練の保全マンは「指感覚」で判断します。

【目安】 ベルトの中央を、親指でグッと強く押したとき、

  • 約1cm〜2cmくらい沈む(たわむ)

これくらいがベストです。 新品のベルトは初期伸び(馴染むと少し伸びる)があるため、気持ち「やや強め」に張るのがコツですが、張りすぎにはくれぐれも注意してください。

まとめ

Vベルト交換は、ちょっとしたコツで劇的に楽になります。

  1. まずは切り離して異音の元を確認する。
  2. 「裏返しテク」でスマートに外す(動画参照)。
  3. ダメならマイナスドライバーで強制的に外す。
  4. 張りは「指で押して沈む感覚」で調整。

この手順を使い分けるのがプロの現場対応力です。 回転体への巻き込みには十分注意して、ご安全に!

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