【設備保全の失敗談】「チェンジマン」になるな!真空が上がらない故障で学んだ切り分けと廃盤バルブの罠

設備保全

お疲れ様です、Naoです。

今でこそ現場でテキパキと動けるようになりましたが、私も新人の頃は数々の「手痛い失敗」をしてきました。 今回は、その中でも特に記憶に残っている「真空(負圧)トラブル」での大失態を共有します。

当時の私に足りなかった「切り分け」の考え方と、プロなら知っておくべき「型式変更の罠」についてお話しします。

事件発生:プレスの真空が上がらない!

まだ現場に出て間もない頃、プレスのポット側で「真空が上がらない」というトラブルが発生しました。 備え付けのデジタル圧力計を見ても、数値はほぼゼロ。どこかで盛大にエアを吸い込んでいるのは間違いありません。

焦った私は、理論的な「切り分け」を飛ばして、「怪しい部品を片っ端から変える」という、今思えば一番やってはいけない行動に出てしまいました。

迷走した「とりあえず交換」の連鎖

当時の私は、「部品を変えれば直るはず」と信じ込んでいました。

  1. 真空ポンプの振替 一番怪しいと思い、重たいポンプを汗だくになって予備機に乗せ換えました。しかし、デジタル圧力計の数値は変わらず……。
  2. よく破れる箇所のホース交換 「いつもここが破れるんだよな」という箇所のホースを数本新品に変えましたが、これも効果なし。
  3. 真空電磁弁の交換 最後に残った電磁弁を新品に交換しました。これで直るはずだ!と思いましたが、やっぱり直りません。

「ポンプもホースも弁も変えたのに、なぜ!?」 完全にパニックになり、現場で立ち尽くしてしまいました。

起死回生!「親指一本」でわかった真実

そこへ先輩が通りかかり、一言。「Nao、どこまで正常か確認したか?」

言われるがまま、私はポット(吸着部)とピストン(駆動部)の間にあるホースを抜き、ピストン側の穴を自分の「親指」でギュッと塞いでみました。

すると……デジタル圧力計の数値が一気にグイーン!と跳ね上がったのです。

この瞬間、全てが理解できました。

  • ポンプからこの指先までは100%正常。
  • 漏れている(異常がある)のは、この指から先(ピストン側)だけだ。

最初にこの「指一本」の切り分けをやっていれば、あの重たいポンプ交換なんてしなくて良かったのです。

真犯人は「後継機種」の落とし穴

漏れているエリアが特定できたので、そこにある部品……先ほど私が交換したばかりの「新品の電磁弁」を調べました。 すると、信じられないミスが発覚したのです。

「矢印の向き」が同じなのに、逆!?

実は、元々ついていた電磁弁は既に「廃盤」になっており、取り付けたのはメーカー指定の「後継機種(新型式)」でした。

私は、「本体に書いてある矢印(→)の向き」を、前の部品と同じ方向に向けて取り付けました。 しかし、詳しく仕様を調べると、新型式ではポートの配置(IN/OUTの関係)が旧型と逆になっていたのです。

つまり、「矢印を同じ向きにした」ことが、結果として「逆に取り付ける」ことになっていました。 これでは真空がダダ漏れになるのは当然です。

この失敗から学んだ「プロの鉄則」

この苦い経験から、私は2つの大切なことを学びました。

  1. 部品を変える前に「切り分け」をせよ いきなり工具を持つのではなく、ホースを折る、指で塞ぐといった原始的な方法で「正常なエリア」を確定させるのが先決です。
  2. 「前と同じ向き」はリプレース時には通用しない 廃盤品から新型式に変える時は、もはや「別物」です。 本体の形や矢印を信じるのではなく、必ず「ポート番号」と「回路図記号」を確認する癖をつけましょう。

初心者の頃のこの失敗があったからこそ、今の私は「まず切り分けから」を徹底できています。皆さんも、新型式への交換にはくれぐれもご注意を!

まとめ:「チェンジマン」になるな

故障したら、診断もせずに「とりあえず部品を変えてみる」人。 現場では、そんな思考停止した作業員のことを、皮肉を込めて「チェンジマン(交換屋)」と呼ぶことがあります。

今回の私は、まさにその「チェンジマン」でした。 「変えれば直るだろう」という甘い考えが、結果としてポンプ交換という無駄な重労働と、長時間のライン停止を招きました。

  • チェンジマン: 根拠なく部品を変える人。
  • エンジニア: 根拠を持って原因を特定する人。

皆さんは、私のように部品をただ交換するだけの「チェンジマン」にはならないでください。 工具を持つ前に、まずは親指一本で「切り分け」を行う。 そのひと手間こそが、あなたを本当のエンジニアにしてくれるはずです!

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