今回は、設備の延命化やメンテナンスにおいて、今まさに現場で急増している三菱電機製ACサーボアンプの更新(リプレース)をテーマに記事をまとめました。
対象となるのは、MR-J2S-BシリーズからMR-J4-Bシリーズへの置き換えです。 カタログやマニュアルの通りに進めても、実際に電源を入れると「えっ、なんで!?」と頭を抱えてしまうリアルな現場の罠について、私の経験を基にトラブルシューティングを徹底解説します。
💡 まず結論!今回のリプレース作業における最重要ポイント3選
時間がない方のために、この記事の要点を先にまとめます。
- 強制停止(EMG)用の外部24V電源: アンプ更新時、AL.E6エラーを消す(EMG回路を活かす)ために、DICOM・EMGピンへ外部から新たに24V電源を配線する必要があるケースが多い。
- ブレーキ用24V電源の極性: モーターの電磁ブレーキ電源を配線する際、24V(+)と0V(-)の極性を絶対に間違えないこと(逆に繋ぐとショート状態でブレーキが開放されません)。
- ソフトの罠: J2S互換モード等で動かす場合、最新のセットアップソフト「MR Configurator2」が使えず、旧型の「SETUP161」が必要になるタイプがある。
※回路やソフトの仕様は型式によって細かく異なるため、必ず作業前にお手元の取扱説明書に記載されている内容を確認してください。
⚠️ 事前にお読みください(重要な注意点) MR-J2SからMR-J4への更新を行うすべての設備で、これから紹介する外部配線の追加が絶対に必要になるわけではありません。既存の回路設計や使用する置き換えキット(変換アダプタ等)の仕様によって、そのまま何事もなく動くケースもあります。 しかし、三菱製のサーボコントローラの更新の際に「アンプを交換して電源を入れたら、いきなりE6(AL.E6)のエラーが出た!」という事象が発生した場合は、この記事で紹介する原因である可能性が極めて高いです。
当ブログの解説を参考にしつつ、最終的な配線ピン番号や設定手順については、必ず実機の取扱説明書に記載されている仕様を確認した上で作業を行ってください。
【罠その1】電源投入でいきなり「AL.E6(強制停止警告)」が発生!
無事にアンプの設置が終わり、いざ制御盤の主電源をON!とした直後、アンプの表示部に「E6(AL.E6:サーボモータ強制停止警告)」が点滅してサーボオンできない……。リプレース時に非常に発生しやすい最初の罠がこれです。
メーカーのサポートに確認すると、「CN3の10番ピンを使っている回路の場合は、外部から24Vを持ってこないと動作しません」と言われます。この理由を少し深掘りして解説します。
なぜ起きる?(理由の解説)
- MR-J2S時代(ビフォー): アンプの内部に「内蔵 24V 電源(VDD)」を持っていました。そのため、CN3の9番ピン(VDD)と10番ピン(SG)を利用することで、外部電源を用意しなくても、アンプの内部電源だけで非常停止(EMG)などの信号回路を完結させることができました。
- MR-J4時代(アフター): 安全規格の向上などの理由でアンプの仕様が変更され、J2S時代の「アンプ内蔵電源(VDD)」を流用した回路がそのまま機能しなくなります。
- 結果: 強制停止(EMG)の信号線に24Vの電圧がかからず、アンプ側が「非常停止ボタンが押されている(信号OFF)」と勘違いしてしまい、安全のためにAL.E6を出していたのです。
解決策:外部24Vをどう配線するべきか?
盤内にある外部のDC24V電源(オムロンのS8VSなど)を使って、新しく電気のルートを作ってあげます。 日本の製造現場で圧倒的に主流な「シンク入力(マイナスコモン)」の場合、実際の盤内配線は非常にシンプルです。
- 非常停止スイッチを挟む場合(基本)
- 盤内の外部24V電源の【プラス(+)】を、アンプの「DICOM(デジタル入力コモン)」に接続する。
- アンプの「EMG」から出た線を、「非常停止スイッチ」の入力側へ繋ぐ。
- スイッチを通過した線を、盤内にある「0V(マイナス)端子台」へ落とす。
24V(+) ➔ DICOM ➔ EMG ➔ 非常停止 ➔ 0V端子台という正しいループが完成し、AL.E6エラーは消えます。 - 非常停止スイッチを挟まない場合(直結) 大元の電源で安全回路を一括遮断する設計などで、アンプ単体のEMGを常に「解除(ON)」にしておきたい場合はもっと簡単です。 DICOMに【+24V】を、EMGに直接【0V】を繋ぐだけで終わります。
💡 現場のワンポイント メーカーの取扱説明書の回路図を見ると、スイッチの後にアンプの「10番ピン(SG)」へ戻すように書かれていて難しく見えますが、要するに「SGも0Vラインに繋がっている」という図面の理屈です。実際の作業では、わざわざアンプの小さなピンに配線を戻す必要はなく、盤内の0V端子台へ直接落としてしまえばOKです。 また、現場の仕様でCN3がモレックスコネクター等で中継できるようになっている場合は、そこを活用するとよりスマートに結線できます。
【非常停止を挟んだ場合の配線例】

【罠その2】J2S互換モードだとセットアップソフトが繋がらない?
「MR-J4だから」と思い込み、最新のセットアップソフトウェアである「MR Configurator2」だけを作業用PCにインストールして現場に乗り込むと、思わぬトラブルに見舞われます。
私の経験上、MR-J4を「J2S互換モード」で立ち上げて動作させている場合、最新のMR Configurator2ではアンプと通信が繋がらない(認識されない)ケースが非常に多いです。
通信が弾かれて接続できない場合は、焦らずに取扱説明書で「J2S互換モード時の対応ソフトウェア」の項目を確認してください。この互換モードのケースでは、旧型のセットアップソフトである「SETUP161(MR Configurator)」が必要になることが多いです。
現場でアンプとPCが通信できないと、パラメータの確認も調整もできず完全に作業がストップします。事前の取説確認と、新旧両方のソフトをPCに準備しておくことがリプレース成功への近道です。
【罠その3】エラーは消えたのにモーターが動かない!ブレーキ電源「極性」の罠
AL.E6も消え、ソフトの通信も繋がり、いざ試運転のためにサーボオン!……したのにもかかわらず、モーターが全く回らない、過負荷系統のアラームがでる場合、次に疑うべきは「電磁ブレーキ用のDC24V電源の極性(プラスとマイナス)」です。冒頭のまとめにも書いた「24Vと0Vを間違えない」という最重要ポイントがこれにあたります。
なぜ極性が逆なだけでロックしてしまうのか?
通常、モーター単体のブレーキコイル自体にはプラス・マイナスの制限はありません。しかし、機械の制御盤内のリレー回路や中継端子台には、サージキラー(ダイオード)が組み込まれていることがほとんどです。
もし24Vの配線を逆に接続してしまうと、このダイオードが「ショート(短絡)状態」になってしまいます。電気がすべてダイオード側に逃げてしまい、肝心のブレーキコイル側への電圧が著しく不足します。
電圧が足りないため、電磁ブレーキが物理的に開放されず、モーターのシャフトをガッチリと掴んだままロック状態になっていた、というのがこのトラブルの全貌です。
対策
「エラー表示はないのにモーターが回らない」という時は、一度テスターを使って、モータ側のブレーキ端子に届いている24Vの極性(+と-)が図面通りに正しく印加されているかを確認してください。逆に配線されていた場合は、正常に戻すだけであっさりと回り始めます。
まとめ
MR-J2SからMR-J4への置き換えは、一見すると簡単そうに思えますが、いざ蓋を開けてみると「現場の配線回路の癖」や「新旧の仕様変更」による罠がいくつも潜んでいます。
図面やカタログ通りにいかないのがメンテナンス・保全の日常です。だからこそ、こうしたトラブルを一つずつ解決した経験は、エンジニアとしての大きな財産になります。この記事が、同じように現場の最前線で奮闘する皆さんのトラブルシュートのヒントになれば幸いです。焦らず、安全第一で頑張りましょう!
(※本記事の内容は、特定の設備環境における実体験を基にした事例です。実際にリプレース作業を行う際は、必ずご使用の機器の最新の取扱説明書をご確認の上、作業を行ってください。)

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